ガス系消火設備等の設置基準
ガス系消火設備が必要になる防火対象
ガス系消火設備は、防火対象物の使用される部分の用途により設置が必要になります。
防護区画 | 設置が必要な床面積 |
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機械式駐車場 | 地階:200m²以上 1階:500m²以上 2階以上:200m²以上 屋上:300m²以上 |
立体駐車場 | 車両収容台数10台を超える面積 |
発電機室、変電室、電気室 | 200m²以上 |
通信機械室 | 500m²以上 |
消防法のガス系消火設備の種類
消防法でガス系消火設備は、燃焼反応を遮断して消火するハロゲン化物消火設備と、酸素濃度を少なくして消火する不活性ガス消火設備に分けられます。ハロン 1301の製造が中止になり、新しく開発された消火剤を新ガスと呼びます。
消火剤の種類 | |||
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ハロゲン化物消火設備 | 不活性ガス消火設備 | ||
新ガス | 新ガス | ||
HFC-227ea HFC-23 FK-5-1-12 |
ハロン 1301 | IG-55 IG-541 窒素 |
二酸化炭素 |
消火剤による基準の違いについて
ハロゲン化物消火設備 | 不活性ガス消火設備 | |||
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HFC-227ea | ハロン 1301 | 窒素・IG-541 | 二酸化炭素 | |
面積1000m²以上または 体積3000m³以上の場所 |
● | ○ | ● | ○ |
自動放出 | ○ | △ | ○ | △ |
局所放出 | × | ○ | × | ○ |
避圧装置 | 必要 | 不要 | 必要 | 不要 |
放出時間 | 10秒 | 30秒 | 60秒(必要量の90%を放出する場合) | 60秒 |
●は特例申請により設置可能 △は原則手動 |
消火剤の必要量
全域方式の消火剤量算出方法は、防護区画の体積に1m³に必要な消火剤量を乗じて求めます。 代表的な防護区画の1m³に必要な消火剤量は次の通りです。※ここで改行する()内は消火剤の総量の最低限度を示しています。
ハロゲン化物消火設備 | 不活性ガス消火設備 | ||||
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HFC-227ea | ハロン 1301 | 窒素 | IG-541 | 二酸化炭素 | |
駐車場 電気室 変電室 通信機械室 |
0.55 kg/m³ | 0.32 kg/m³ | 0.516 m³/m³以上 0.740 m³/m³以下 |
0.472 m³/m³以上 0.562 m³/m³以下 |
50m³ 未満:1.0kg/m³ 50 ~ 150m³未満: 0.9kg/m³(50kg) 150 ~ 1500m³ 未満:0.8kg/m³(135kg) 1500m³ 以上:0.75kg/m³(1,200kg) |
人体への安全性と消火時間の比較
安全性
ハロゲン化物消火設備 | 不活性ガス消火設備 | ||||
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消火剤 | HFC-227ea | ハロン 1301 | 二酸化炭素 | IG-541 | 窒素 |
消火剤濃度 | 7% | 5% | 34% | 37.6% | 40.3% |
人体への影響 | 安全 | 安全 | 危険 | 安全 | 安全 |
酸素濃度 | 18~19% | 20% | 13.9% | 13.1% | 12.5% |
消火時間 (消火剤放出時間) |
10秒 | 30秒以内 | 60秒 | 60秒 (60秒で必要消火剤量の90%以上を放出) |
消火時間が長ければ長いほど、火災による有害な燃焼ガスが発生します。
HFC-227eaは酸素濃度を18~19%に保ちます。
HFC-227eaは、酸素濃度を下げて消火する不活性ガス消火剤とは異なり、消火剤自体に消火能力があるため、人体に危険な酸素濃度になることがなく、万一誤放出しても安全です。
労働安全衛生法の規定では、18%未満が酸素欠乏状態としていますが、HFC-227eaの場合は18%~19%までしか酸素濃度が下がりません。
消火剤の選択による設置比較
必要消火剤量と貯蔵容器本数及び避圧口の比較
消火剤の種類 | 消火方式 | 必要消火剤量 | 消火剤貯蔵容器本数 | 避圧口 ※ |
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HFC-227ea | ピストンフロー(PF) | 3000m³×0.55kg/m³=1650kg | 13セット26 (128kg/115.4L) | 7,650cm² |
従来型 | 21 本 (80kg/82.5L) | |||
ハロン 1301 | 3000m³× 0.32kg/m³=960kg | 14 本 (70kg/70L) | 不要 | |
二酸化炭素 | 3000m³× 0.75kg/m³=2250kg | 41 本(55kg/82.5L) | 不要 | |
窒素 | 3000m³× 0.52m³/m³=1560m³/m³ | 77 本(20.3m³ /83L) | 13,225cm² |
※避圧口の面積算出は消防法による
消火システムによるボンベ室の面積比較
防護区画により、最適な消火システムを選択できます。
ピストンフロー(PF)
ピストンフローは大型化していく防護区画に消火剤の10秒放出を可能にしました。従来の消火設備と異なり、貯蔵容器ユニットは消火剤貯蔵容器とサポート容器(窒素ガス)で構成されます。HFC- 227ea 消火剤は窒素で4.2MPa に加圧され、液体で貯蔵されています。
容器弁が開放され、消火剤が配管に流れ出すのと同時にサポート容器から窒素が供給されるため、貯蔵容器内がほとんど減圧せず一定圧力で消火剤が押し続けられ、防護区画が遠くに離れていても充分に放出することができます。
消火剤の種類
- HFC-227ea
- 高層立体駐車場
- 大型機械式駐車場
- 大型電気室
- 大型データセンター
従来タイプ
防護区画外に設けられた消火剤容器置場(ボンベ室)に消火剤貯蔵容器を設置し、防護区画に消火配管で消火剤を送りだす方式です。ボンベ室には消火剤貯蔵容器ユニットの他に、起動容器ユニット、制御盤などの関連機器が設置されます。
同一の消火剤貯蔵容器で複数の防護区画に対し、選択弁による選択弁方式とすることができます。
消火剤の種類
- HFC-227ea
- ハロン 1301
- 二酸化炭素
- 通信機械室
- クリーンルーム
- 機械室・電気室
- コンピュータ室
- 美術館・博物館
- 重要文化財
- データ処理室
- 非常用電源装置
- 駐車場
パッケージタイプ
貯蔵容器、制御装置、蓄電池設備、噴射ヘッドをパックにしたコンパクトな消火システムです。ボンベ室の必要がなく、素早い消火が必要な場所に、標準タイプばかりか必要に応じてカスタマイズも可能なシステムです。
消火剤の種類
- HFC-227ea
- ハロン 1301
- 二酸化炭素
- 通信用シェルター
- コンピュータ室
- データ処理室
- 電気室・キュービクル
- 製造装置
火災発生から消火までのガス系消火設備のプロセス比較(自動設定)
特例申請について
特例申請および高圧ガス保安法
消火剤の種類 | 特例申請/個別評価 | 高圧ガス第2種貯蔵所の届出 ※1 |
---|---|---|
HFC-227ea | 必要 | 不要 |
ハロン 1301 | 不要 | 不要 |
二酸化炭素 | 不要 | 不要 |
窒素 | 必要 | 必要 ※2 |
※1 | 高圧ガス保安法第16条、17条の2 政令第5条により、体積 300m³以上の高圧ガスを貯蔵する場合は、高圧ガス第2種貯蔵所の届出をする必要があります。(液化ガスは 3,000kg以上が対象) |
※2 | 消火剤容器ユニットを300m³以下に分け設置すれば届出は不要。但し、消火配管は消火剤容器ユニットごとに専用配管となるため、窒素の場合主配管は6本になる。 |
1) 消防法施行規則第 20 条および消防法施行令第 32 条(特例)
設置基準を超えたものは、消防法施行令32条(いわゆる特例申請)を適用させて設置します。管轄消防長又は消防署長の指導により、一般財団法人日本消防設備安全センターに申請し、評価委員会で評価を受けます。
2) 危険物の規制に関する政令第 23 条 (特例)
平成23年(2011年)12 月 21 日付け総務省告示第558号により、設置可能な製造所等の区分、防護区画の規模が示されました。 基準を超えたものは従来通り、危険物の規制に関わる政令第23条(いわゆる特例申請)を適用させて設置します。 危険物の評価申請は危険物保安技術協会(KHK)で行います。
ガス系消火設備等における評価・申請スケジュール
日程 | 工程 | 作業 | |
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1ヶ月目 | 申請用諸情報の収集 | ・申請図書用情報の依頼 | |
2ヶ月目 | 初旬 | 申請用図書作成 | ・不足情報の要求と入手 ・入手した資料 ・ 情報をもとに申請図書作成 |
中旬 | 所轄消防署打合せ 安全センター/ KHK ヒアリング | ||
下旬 | 申請図書修正 ・ 追加 | ・消防指摘事項の情報収集 ・ 修正、ヒアリングに基づく修正 ・追加資料の収集と追加図書作成 |
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安全センター/ KHK 修正ヒアリング | |||
申請・申請手数料振込 委員会用図書作成持込 |
・委員会用図書修正と作成、修正 ・要 申請書(鏡) |
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3ヶ月目 | 初旬 | 第1回専門委員会 | ・指摘事項がある場合は回答書作成 |
4ヶ月目 | 初旬 | 第2回専門委員会 | ・指摘事項がある場合は回答書作成 |
下旬 | 評価委員会 | ||
5ヶ月目 | 初旬 | 評価結果書入手 |
※評価内容によっては、6ヶ月以上の場合もあります。